イスラエル、アメリカのイラン核施設攻撃に対する声明

 

 

イスラエル、アメリカのイラン核施設への攻撃は、

国際法、特に国連憲章に反する蛮行に他ならずこれを糾弾するとともに、

日本政府は、国際法を遵守するよう強く当事国および国際世論に訴えるよう求める声明

 

6月13日、イスラエルは、イランの核施設への攻撃を行った。6月22日には、アメリカもウラン濃縮施設など3つの核施設を攻撃した。これに対し、イランも報復攻撃を行ったが、その後、6月25日から、停戦状態が続いている。この停戦は圧倒的な軍事力を誇る超大国アメリカが、他国をねじ伏せるように力づくで停戦を実現させたものである。もっとも、事態は未だ流動的であり、完全なる戦争の終結が求められている。

 

もとより、イスラエルの行為は、自衛の場合を除いて武力の使用を禁じる国連憲章に反する。その求めに応じて米軍が加勢してイランを攻撃したことも正当化する理由は全くない。

 国連憲章第2条4項は、加盟国に対し、武力による威嚇や武力の行使を禁じている。また、第33条は、国際の平和と安全を脅かす紛争の当事国に対し、交渉や調停などの平和的手段で解決することを義務付けている。

イスラエルは、イランの核開発計画への先制攻撃を行ったものであり、「イスラエルの生存を脅かす明白かつ差し迫った危機があった」と攻撃を正当化している。しかしながら、IAEAはイランが核兵器を開発している証拠はないと報告しており、イスラエルの主張を裏付ける証拠は明らかでなく、国連憲章51条が規定する自衛権の行使には該当しない。

 今回の事態は、国際法、特に国連憲章を蹂躙する無法行為に他ならず、当協会は、イスラエルおよびアメリカの今回の軍事攻撃を断固糾弾するものである。

 

日本政府は、イスラエルによる核施設の攻撃の際には、当初は、「到底容認できない。極めて遺憾で、強く非難する」と述べながら、直後に開かれた主要7カ国(G7)首脳会議では、イスラエルの「自国を守る権利」を認める首脳声明に加わった。また、6月25日には、石破首相は記者会見で、「事態の早期沈静化を求めつつ、イランの核兵器保有を阻止するものだ」と理解を示した。また、参議院選挙が公示されたが、政党の中には、トランプ大統領の決断は評価できると今回の軍事攻撃を正当化する党もいくつか存在する。

 

しかしながら、今回のイスラエル、アメリカのイランに対する核施設への攻撃は、明らかに国際法、特に国連憲章に違反するものであり、評価すべき余地は全くない。これを評価することは、法の支配ではなく力による支配を認めることに他ならず、今後の西アジアの情勢を破滅に導くものである。

 日本政府は、戦争放棄を謳う憲法9条を掲げる唯一の被爆国の政府として、アメリカに追随するのではなく、国際法や国連憲章を遵守させるべく積極的に行動するべきである。

 また、アメリカのイランに対する軍事攻撃を評価する政党は、今回の軍事攻撃が、国際法や国連憲章違反であることを認識、自覚して政策論争に臨むべきである。

 

                          2025年7月18日

日本国際法律家協会(JALISA)会長